日常生活に支障をきたす【多汗症】の原因とは?

汗をかくのは自然のことなので、人より多めの汗をかくとなると「汗っかき」と片付けられていまいますが、異常な発汗は多汗症[注1]という病気の場合もあります

ワキガというのは、周囲にニオイという生理的不快な思いを拡散してしまう疾患、体質ですが、それに対して多汗症は大量の汗をかくことで、その本人が生理的な嫌悪感を抱くことに大きな違いがあります[注1]

このようにワキガは人前では言いにくい、とても厄介な症状ですが、多汗症もまた心を重くしてしまう深刻な身体的な特徴なのです[注1]

参考文献:[注1]手掌多汗症とその手術

それでも、汗をかいているだけだから、大したことはないと思われがちですが、多汗症には、ほかの疾患によって副次的に引き起こされている場合もあります[注2]

参考文献:[注2]原発性局所多汗症診療ガイドライン

そこで今回は、悩んでいる人も多い多汗症について詳しく解説していきますね。

汗をかく3つの要因

汗をかくきっかけは

・温熱性発汗

・精神性発汗

・味覚性発汗

の3つ[注3]があります。

参考文献:[注3]皮膚科学と化粧品

温熱性発汗[注4]は、運動をしたり、外気温が上昇した時に体温を下げるための汗。精神性発汗[注4]は、緊張したり、驚いたりした時に手のひら、足の裏、ワキの下など特定の部位に発汗。

そして「味覚性発汗[注4]は、香辛料が効いた辛いものを食べたときに、顔や額だけでなくワキや背中、ときには頭を中心にして起こります。

また、エクリン汗腺とアポクリン汗腺が共存するワキは、物理的な熱による温熱性発汗と、感情的なストレスによる精神性発汗の両方の発汗が行われる特殊な部分なのです[注4]

参考文献:[注4]原発性局所多汗症診療ガイドライン

【関連記事】下記の記事では汗について詳しく説明しています。ぜひ参考にしてみてください。

ワキガの原因と汗のメカニズム
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多汗症とは

多汗症は基本的に精神的ストレスが原因であるといわれていて、異常な発汗は多汗症そのものを発症している場合、循環器や神経疾患などの病気を患っていると副次的に引き起こされている場合があります。[注5]

さらに多汗症とひとくちに言っても、その種類はさまざまですが、全身に汗が増加する「全身性多汗症[注5]体の一部に汗が増える「局所性多汗症[注5]の2つに大きく分別することができます。

また、多汗症は「汗っかき」と混同されがちですが、汗っかきは激しい運動の後や周囲の暑さに敏感に反応して体内に熱がこもり、大量に汗をかいていしまうというように、その理由がはっきりとしています

一方多汗症は、別名「不安症」「対人恐怖症」とも呼ばれていて、自律神経の失調や心因性のもの、もしくはほかの病気が引き起こす兆候にも関係あるのです。[注5]

参考文献:[注5]原発性局所多汗症診療ガイドライン

他の病気が心配な「全身性多汗症」

文字通り、全身にわたって、汗を大量にかいてしまう疾患で、結核などの感染症、内部泌疾患、薬剤性などの二次性に生じることが多く、これらの病気を患っていると、多くの場合はこの全身性多汗症になる場合があるようです[注6]

参考文献:[注6]自律神経症候に対する治療

また、こうした大量の汗をかく症状が起きるのは、急性リウマチやバセドー氏病、結核、糖尿病、婦人病、更年期障害などの汗が出る病気によって、ホルモンバランスがくずれて発生する場合もあります。[注7]

(前略)なぜ、こうした大量発汗が起きるかというと、脳の視床下部にある体温調節中枢の異常のほか、急性リウマチやバドゼー氏病、結核、婦人病、更年期障害、などの病気によってホルモンバランスに変調をきたして発症するケースも見られます。(後略)

引用元:[注7]2010年 長崎出版 重本譲 『ドクターによるワキガ・多汗症・黄ばみの最新治療』50Pより引用

多汗症は、汗を大量にかくこと自体は異常ではなく、逆にいえばこのように、ほかの病気の疑いもあるということになるのです。[注7]

参考文献:[注7]発汗は身体にとって重要な「冷却システム」

さらに交感神経が敏感な方や性格の遺伝のほか、これらとの合併症として発症することもあります[注8]

参考文献:[注8]原発性局所多汗症診療ガイドライン

そのため全身性多汗症の治療は、その原因となっているそれぞれの疾患を、各専門医に相談して、判断していくのが良いでしょう

一部分に異常な汗をかく「局部性多汗症」

多汗症でもっとも多いのが「局部性多汗症」で、ワキの下や手のひら、足の裏、頭部などの体の一部に異常な汗をかいてしまう症状です[注9][注10]

参考文献:[注2]原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015 年改訂版

こうしたものは暑さに反応して起きるものではなく、大部分が精神的なストレスによるもの、または何かの外的な要因によって引き起こされます[注9][注10]

手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)

これも文字どおり、手のひらにビッショリと汗をかいてしまう症状をいい、日常生活をする上で、もっとも支障をきたすのが、この手掌多汗症です[注9][注10]

「手に汗握る」という言葉がありように、人は誰でも緊張すれば掌が汗ばんできます

ところが、手掌多汗症はリラックスいている状態でも掌が汗ばんでいて、握手ができない、ノートや資料が汗で濡れ破れるといった悩みも出てきます

これに緊張が加われば、一度手を握って、開くと水滴がしたたり落ちるほどの汗をかいてしまうほどです[注9][注10]

さらにこの手掌多汗症についての症状は大きな違いがあり、手は軽く湿っているものの、よく見ないと汗ばんでいるか分からない程度なのにく気にされている方も少なくありません

そのため、いきなり根本的に治す手術を考える前に、まずは塩化アルミニウム液の外用と並んで、手汗対策のハンドクリームなどを使い、自分でできる対策から始めてみましょう[注9][注10]

それでも改善できない場合には、信頼できるクリニックでカウンセリングを受けるようにして判断してくだいね

足底多汗症(そくていたかんしょう)

足底多汗症は手のひらではなく、足の裏に大量の汗をかく症状です[注9][注10]

足の裏、つまり靴の中は普段、目に触れない部分ですが、症状が重い人になると精神的緊張により多量の発汗がみられます

また、常に足の裏が湿ってるか濡れているので、はだしで廊下を歩くと足跡がついたり、スリッパなどの履物がよく汗だらけになったりもします。

このように足蹠多汗症は、クツの中はいつも蒸れた状態であるため、雑菌の巣窟になり、それが汗や皮脂を分解して、悪臭のもとになってしまうのです[注11]

参考文献:[注11]皮膚科学と化粧品

さらに二次的な症状として、白癬菌の感染によって爪白癬 (つめはくせん)を引き起こす可能性があります[注12]

参考文献:[注12]皮膚真菌症診断・治療ガイドライン

これも手掌多汗症と同じく、自分でできる対策から始めてみて、それでも改善できない場合には、信頼できるクリニックでカウンセリングを受けるようにして、判断したほうがいいでしょう

味覚性多汗症(みかくせいたかんしょう)

味覚的な刺激によって大量に汗をかくのが味覚性多汗症です[注9][注10]

香辛料や唐辛子が入った辛い食品や熱いものに反応して、汗をかくのは正常なのですが、過剰な人になると味覚神経への刺激が通常の限界を超えて、食事のたびに大量の汗をかいてしまいます[注9][注10]

味覚性多汗症の役割については、まだ解明されてないことが多いのですが、口の中の辛さによる刺激を脳が温度上昇と勘違いし、体温調節のために発汗を促しているのではと考えられています[注9][注10]

また、味覚性多汗症に関しては症状もそれぞれで、本来生理的なものですから、治療の対象にはなりません

そのため、味覚性多汗症の治療は、単に汗を抑える全身用汗対策クリームなどを使う方法のほか[注9][注10][注13]心療内科[注14]などと連携して、メンタルな面の治療も必要になるので、クリニックで医師に診断してもらい、判断していくのが望ましいでしょう

参考文献:[注9]原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015 年改訂版

参考文献:[注10]自律神経症候に対する治療

参考文献:[注13]皮膚科学と化粧品

参考文献:[注14]心療内科とは何をするところ?

異常な発汗は他の病気の可能性も

これらの多汗症とは別に、汗をかく症状が、別の疾患の見逃せないサインということもあるようです

まず、女性の更年期障害の場合ですが、女性ホルモンの一つである、エストロゲンには汗腺を調整する機能があります

それが30代半ばから減りはじめ、更年期を迎えるとホルモンの分泌が急激に減少。この変化によって自律神経が不安定になり、異常な発汗が認められます[注14]

さらに、更年期を迎えると精神的にも不安定になり、さまざまな症状を引き起こしますが、そのひとつにこれまで説明してきた精神性発汗も起こりやすくなってしまうのです[注15]

参考文献:[注15]気になる加齢シリーズ 更年期障害

そのほか、糖尿病では低血糖値状態になると、交感神経が興奮し、大量に発汗していまいます[注16]

参考文献:[注16]糖尿病性自律神経障害

こうした場合には、すぐに糖分補給をしないと意識がもうろうとなり、危険な状態を引き起こしてしまうため注意が必要です[注17]

参考文献:[注17]日常生活の注意点

また、内分泌疾患などでも異常な発汗があるほか、感染症で菌やウイルスに感染した場合、発熱や倦怠感などの症状とともに大量に発汗してしまうこともあります[注18]

参考文献:[注18]自律神経症候に対する治療

そのため、異常な発汗については素人判断をせずに、必ず専門医の診察を受けるようにしてください

最後に

・汗っかきと多汗症には大きな違いがある

・基本的に多汗症は精神的ストレスが原因

・異常な発汗は他の病気の可能性も

・素人判断をせずに必ず専門医の診察を受ける

・多汗症は汗を大量にかくこと以外は健康な症状

ここでは、ワキガと多汗症それぞれをわけて解説していますが、これらの症状は、ワキガ単独、もしくは多汗症単独というケースのほか、私の妻のように、その両方を併発している場合もあるのです

このうち、日常生活をするうえで、とくに厄介なのが手のひらの多汗症です

日本では握手の習慣は定着していませんが、手のひらが汗ばんでいれば握手ができない、美容師であれば、ハサミが滑ってうまくカットできないなど、仕事上の悩みも出てきます

また、妻と同じく手のひらが汗ばんでいるため、好きな人と手をつないで歩きたいと思っていても、嫌われるのが怖くて手を差し出すことができなかったという話を耳にします

このように多汗症もまた深刻な悩みですが、その症状がどのタイプなのかを知り、その原因を取り除くことができれば、多汗症の緩和にも繋がるのです

多汗症は、人より汗を多くかくこと以外は、いたって健康な症状です。いきなり根本的な治療を考える前に「体」の面から正しい多汗対策と「心」のケアから始めてみてくださいね

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