ニオイを感じる仕組みについて

ニオイは、記憶と深い繋がりがあることで知られています

私たちが記憶を呼び覚ます時に、ニオイにまつわる経験が感化されて思い出すことが多くあるのです

また、一定以上の濃度になれば、たとえ「良いニオイ」でも不快になり、反対に、ニオイの濃度が薄くなれば「快いニオイ」に変化するケースもあります。

このようにニオイは、その人の置かれている条件や環境により異なるため、一様にその境界線を引けるものではありません

そこで今回は、普段私たちがどのようにして「良いニオイ」か「いやなニオイ」を判断しているのか、詳しく解説していきますね。

ニオイの良し悪しは脳で判断する

人それぞれの生まれ育った境遇や、いろいろな体験や後天的なデータが、ニオイを識別する大脳皮質には、ギッシリと詰まっています[注1]

そして、ニオイの刺激が大脳皮質にたどり着くことで、これらのデータに知らされることになるのです

例を挙げると、生まれたばかりの子どもは、脳がまだ十分に機能してないため、大便のニオイを「臭い」と、感じることは基本的にありません[注1]

周囲の大人たちが、大便のニオイを嗅ぎ「臭い」と不快な顔をするのを見て、「大便のニオイは臭いもの」と子どもは学んで覚えていくのです[注1][注2][注3]

また、かつては大好物だった食べ物を、体の調子が良くないときに食べて吐いたことがあり、それ以降にその食べ物のニオイをかいだだけで、気持ちが悪くなってしまうという経験を持つ人はかなりいるようです

あるいは反対に、どこかよその人にとっては毛嫌いするようなニオイでも、それが心地よい記憶と結びついていると、その人にとっては良いニオイとなるケースもあるでしょう

要するに、ニオイの良し悪しは、その人のニオイにまつわる経験や記憶が判断しているのです[注1][注2][注3]

参考文献:[注1]脳と心の発達メカニズム

参考文献:[注2]においを感じるメカニズム

参考文献:[注3]鼻のしくみと嗅覚

ニオイが識別されるまでのシステム

私たちは呼吸をすることで、ニオイの分子を空気とともに身体の中に取り込んでいきます

鼻の穴の奥には、ニオイを感知する嗅上皮(きゅうじょうひ)という皮膚があり、鼻から入ったニオイの元素がそれに触れて、嗅上皮の中にあるニオイを感知するセンサーのを刺激[注4][注5]

続いてその刺激は、ある種の電気信号となり嗅球(きゅうきゅう)という嗅覚の中枢へと伝えられたのち、嗅神経(きゅうしんけい)と呼ばれる脳神経の一つを通って大脳に伝わりニオイの情報処理が行われるのです[注4][注5]

この時に、初めて私たちは「ニオイ」感知することができます

しかし、ニオイの快と不快はこの過程では未だ分別されません。大脳皮質にニオイの刺激が到達してから快と不快を判断します

このように、初めからニオイの元素の種類でニオイの良し悪しが決まるわけではなく、一人ひとりの脳で識別されるのです[注4][注5]

参考文献:[注4]においを感じるメカニズム

参考文献:[注5]鼻のしくみと嗅覚

【関連記事】ワキガ臭の種類についてのさらなる詳細は、下記のページに書いてあります。

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五感を刺激!?ニオイが生み出す反応とは?

ニオイの元素が生み出す電気的刺激が、大脳皮質のそれぞれの感覚領域に情報を送り、それから大脳辺縁系に信号が送られます[注6][注7][注8]

しかし、大脳辺縁系は記憶のみならず、その他にも情動や、人間の基本的な感情も支配しているのです[注6][注7][注8]

そのため、ニオイが大脳辺縁系に伝達されると、記憶を呼び起こすだけでなく、喜怒哀楽などの感情と結びつき、それぞれの反応を生み出すことになります[注6][注7][注8]

つまり、記憶と結びついて「良いニオイ」と判断すれば、楽しい記憶が呼び起こされ、うっとりしたいい気分になり、逆に「不快なニオイ」と感じれば、とてもネガティブな気分になるということです。

その上、視床下部に刺激が到達すると、そのニオイに対する具体的な反応を起こすための指示を、それぞれの感覚領域に送られます[注6][注7][注8]

ついで、視床下部の指示によって自律神経が働き、さまざまな影響が私たちの身体機能に与えます

これにより「良いニオイ」を嗅げば、緊張がほぐれ、安らかな気分になり「不快なニオイ」を嗅げば、精神的ストレスを感じてムシャクシャしたりするのです[注6][注7][注8]

参考文献:[注6]ストレス反応の身体表出における大脳辺縁系-視床下部の役割

参考文献:[注7]脳と心の発達メカニズム

参考文献:[注8]鼻のしくみと嗅覚

ニオイの好き嫌い「境界線」4つの基準

①ニオイの種類 ③ニオイの程度 強度
②ニオイの快不快 認容性 ④ニオイの濃度 広範性

「良いニオイ」か「不快なニオイ」かの判断は、一般的に上の4つに基準に合わせて決められます[注9]

(前略)よいニオイか、いやなニオイかは、この4つの基準に照らして判断されますが、快・不快の境目は個人個人によって異なり、一様にその境を線引きできるものではありません。(後略)

引用元:[注9]2011年 旬報社 五味常明『気になる口臭・体臭・加齢臭』20Pより引用

このように、好き嫌いの境界線は、人それぞれの記憶にひもづけられたニオイよって異なり、どれも同じように分別できるものではありません

しかも、その人が置かれている周囲の状況やコンディション、さらに心理状態によっても、ニオイに対する反応はさまざまに変化します[注10][注11]

参考文献:[注10]ストレス反応の身体表出における大脳辺縁系-視床下部の役割

参考文献:[注11]匂い・香りと共存していくためには

嗅覚はスグに鈍化しやすい

私たちの嗅覚には大きな特徴として「適応しやすい」と「人によって違う」という2つがあります

適応しやすいということは、しばらく同じニオイを嗅いでいると、そのニオイを感じなくなってしまうこと

つまり、鼻が慣れた状態の「嗅覚慣化」。私たちの嗅覚は、どんなニオイでもたちまち慣れてしまい、スグに疲れてしまうのです[注10][注11]

最初は「いやなニオイ」だと気になっていても、同じニオイを嗅いでいるといつの間にか慣れてしまい、そのうち「いやなニオイ」だと感じなくなった経験があるのではないでしょうか

これが嗅覚慣化で、ワキガ体質の人が自分の症状に気づかないのは、このように私たちの嗅覚が順応・慣化しやすいからです[注12]

参考文献:[注12]においの知覚と順応・慣化過程に及ぼす認知的要因の効果に関する研究の動向

参考文献:[注13]鼻のしくみと嗅覚

【関連記事】ワキガ体質の人が自分のニオイに気づかない理由については、下記の記事で詳しく説明しています。ぜひ参考にしてください。

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「嗅覚」は「味覚」と同様に変化する

私たちの嗅覚の能力は、年齢、性別、人種など遺伝子レベルでの違いが関与するため、嗅覚には個人差がかなりあります[注14]

参考文献:[注14]においの知覚と順応・慣化過程に及ぼす認知的要因の効果に関する研究の動向

性別でいうと、比較的嗅覚が優れているのは、男性より女性の方です。ところが、生理中は急速に嗅覚が鈍くなることも知られているのです[注15]

参考文献:[注15]森林浴の歴史について

また、味覚と同様に、そのときの体調や精神状態によっても嗅覚は変化します[注16]

例えば風邪をひいてはなが詰まっている時はニオイを感じにくくなりますよね。鼻腔が充血のため腫れ、気道が狭まることで嗅覚が極端に低下するわけです。[注16]

さらに嗅覚は身体的な疲労によっても変化します。朝、起きたばかりの時が、極めて敏感で、夜になるにしたがって鈍くなるのです

このように体が疲れてくると、嗅覚に大きく影響して変化させることが知られています[注16]

参考文献:[注16]嗅覚障害診療ガイドライン発刊に際して

最後に

・ニオイは記憶と深い繋がりがある

・ニオイの良し悪しは個人の経験や記憶が判断

・ニオイを嗅ぐことで感情にも影響がある

・嗅覚はスグに疲れやすい

・嗅覚は味覚と同様に変化する

ニオイを嗅ぐだけでさまざまな過去の記憶が鮮やかに再現した経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

記憶にひもづけられた「よいニオイ」の感覚は、その人の環境条件によって変わってきます

それは、洗濯物がお日様に当たるニオイかもしれないし、コーヒーを淹れたときの、あのフワッとした香りが好きかもしれません。

そう考えると「楽しかった思い出が呼び起こされるニオイ」を嗅ぐことで、リラックス効果が期待できるでことは明らかです

もしこれから「ずっと忘れたくない」と思うようなことが起きたら「ニオイ」とつながり合わせて、良い思い出にしておけば長い年月がたっても、その記憶はなかなか薄れることはないかもしれませんね

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